東京発展裏話 #4
大空を目指した細長い空き地
〜成田新幹線の夢の跡〜
(1999年7月14日 記)
(2002年1月27日 改訂)
(2006年5月7日 写真追加)
(2007年1月8日 改訂)
東京の東部、千葉県の下総台地。ここに船橋市、白井市、印西市、本埜村、印旛村にまたがる広大なニュータウンがあります。千葉県と住宅都市整備公団(現・都市再生機構(UR))を中心に東京のベットタウンとして開発をすすめる「千葉ニュータウン」です。ニュータウンを東西に貫く形で、掘り割り状に一段低い所を鉄道(北総鉄道線)が、その両脇を挟む形で国道464号の車線が走っています。機能的な区画配置です。
この国道に挟まれた鉄道用の掘り割りが幅が広く確保されていますが、現在走っている鉄道は、その半分しか利用していません。残りは一部分、北総線の車庫に利用されている他は、更地のままです。この空間はなんの為にあるのでしょうか。
北総線(左)と併走する細長い空き地(中央)。
白井駅付近にて、2006年3月撮影。
この細長い空き地は、「成田新幹線」という新幹線の予定地です。というか、予定地でした。高度経済成長期、日本全国に新幹線網が計画され、そのひとつとして世界の玄関口・成田空港から鉄道交通の結節点・東京駅を結ぶ新幹線が計画されていました。それが「成田新幹線」です。
成田新幹線の計画はその後のオイルショックで見直され、計画そのものが中止になりました。ところが、中止までの期間に、すでに実現に向けて先行工事が一部で行われていました。ここの線路に沿った細長い空き地もその一つだったのです。
新幹線用地の模式断面図
ちょうど東京と成田を結ぶ位置にこのニュータウンが計画され、ニュータウンの計画段階で、新幹線の用地を確保しておいたのです。完成すれば、幹線国道の中央に、通勤用の北総線と共に新幹線が通る予定でした。計画では、現在の「千葉ニュータウン中央」駅付近に、新幹線の途中駅も設けられることになっていました。
成田新幹線の計画位置略図
成田新幹線の先行工事はここの他に2カ所。成田新幹線用「東京駅」と「成田空港駅」です。
成田空港駅設備は、第一ターミナル、第二ターミナル直下にそれぞれ駅設備、及び空港敷地内の鉄道トンネルが、成田空港建設工事と共に建設されました。現在はJRが新幹線用下り線設備、京成電鉄が新幹線用上り線設備を使用して、JR線、京成線の「成田空港駅」「空港第2ビル駅」として活用しています。到着する電車よりホームがやたらと長いのは、新幹線用に設計されたものだからです。
東京駅設備は、東京駅南の鍛冶橋通り地下に、地上の線路と直行する形で造られる予定となっていました。連絡通路(地下道)の一部のみ完成していましたが、こちらの予定地はその後計画された京葉線の東京駅ホームの場所として転用されました。
この京葉地下ホームからつながる連絡通路(地下道)が、通勤電車が止まる丸の内口側ではなく、新幹線のホームのある八重州口側に向かうのは、新幹線同士の乗り換えを想定していた名残です。